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既存の会社で酒販免許をとりたい!と思ったら知っておきたいこと
2023年02月10日(金)

新たなビジネス展開の一環として、酒類販売免許の取得を考えている会社の方は、ぜひこの記事を参考にしてください。現在、すでに営業中の会社が酒販免許を取得することは可能です。しかし、知っておくべきこと、準備するべきことはたくさんあります。条件が整っていないのに酒販免許の取得申請をしても、お金や時間を無駄にしてしまうだけなので、この記事でまずはポイントを押さえてください。

酒販免許は既存の会社で取得可能

会社の新たな事業展開のために酒販免許の取得を考えているという会社は数多くあります。実際、現在すでに営業中の会社で免許をとることは可能ですが、ハードルは低くはありません。これから酒販免許を取得するなら、最初にすべきことは専任のスタッフがいる税務署、もしくは酒販免許に詳しい当事務所に相談することですが、この記事では既存の会社にて酒販免許を取得する方法についての概要をご紹介していきます。

酒販免許取得の条件

酒販免許について取り仕切っているのは税務署です。税務署では、酒販免許を交付する条件を設定しています。さまざまな要件があるのですが、すでに営業している会社が免許を取得する場合は、以下の要件をかならずチェックされることになります。

決算書はかならずチェックされる

すでに営業している会社の場合は、これまでに決算を行っていますので、決算書がかならずチェックされます。たとえば赤字続きの会社で免許の取得申請をしても、交付される可能性はほとんどありません。つづいてこの決算書についての内容も含む、酒販免許取得条件について見ていきましょう。

税務署が定める取得条件

取得申請が可能な条件としては、以下のようなものがあげられます。

・自己破産により法的な処分を受けた過去(直近3年間)がない人

・直近の決算において、繰越損失が資本額を上回っていない会社

・直近3期のすべて決算において、損失が資本額の2割を上回っていない会社

大雑把ではありますが、これらの要件を満たしていれば、取得申請を行うことが可能です。つづいては、もう少し細かくこれらの要件について解説します。

人的要件

人的要件は、個人や経営者に求められるものです。直近3年間で禁固刑を受けている方などは、この人的要件を満たすことができないため、免許の取得申請を行うことはできません。

経営基礎要件

免許取得を申請しようとする経営者は、上で紹介している「自己破産により法的な処分を受けた過去がない人」であると同時に、経営について豊富な知識と経験を持っている必要があります。さまざまな要素がありますが、上でご紹介している「直近の決算において繰越損失が資本額を上回っていない会社」「直近3期の決算において、損失が資本額の2割を上回っていない会社」はまさにこの経営基礎要件に当たります。そのほか、「税金を滞納していない」「銀行との取引を制限されていない」などもこの要件に該当します。

経営についての知識や経験に関しては、過去に会社を経営していたというだけでは不十分です。過去に同種のビジネスを営んでいたり、酒販業界での業務を経験したりしている人がこれに該当します。ただ、この要件について、税務署は「人」ではなく「経営陣」の知識や経験を総合的に見て判断します。ひとりの経営者に酒販業界で働いた経験がなくても、ほかの経営者に業界経験があれば、クリアできると考えていいでしょう。誰も業界経験を持っていない場合は「酒類販売管理研修」を受けることで取得申請を行える可能性があります。しかし、税務署によっては厳しく審査されることもあります。現在の経営陣に業界経験がない場合は厳しい審査になりますので、専門家に相談する必要があります。

酒販免許取得の準備

ここまでで、酒類販売免許は誰でも取得できるものではないということがおわかりいただけたと思います。しかし、ここまでで条件をクリアしているようなら前途はかなり明るいといえます。ここからは酒販免許取得に向けた準備について解説していきます。

事業の目的

既存の会社が酒類販売免許の取得を申請する場合、事業目的の中に「酒類の販売」を追加する必要があります。(すでに入っているのなら必要ありません)

役員を選ぶ際の注意点

すでにご紹介した「経営基礎要件」があるため、経営者として適切な人物は限られます。とくに難しいのが「経験」の部分です。

申請者等は、経験その他から判断し、適正に酒類の小売業を経営するに十分な知識及び能力を有すると認められる者又はこれらの者が主体となって組織する法人である。

(参考 製造免許等の要件:https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/sake/2-07.htm

とされています。

実際、このような経験や経歴を持つ人物はそれほど多くありません。もう少し詳しく説明すると、申請者は酒販業務に3年以上勤めた経験があるか、調味食品販売業を3年以上経営しているなどの必要があります。

これを補うのが「酒類販売管理研修」です。業界での経験を誰も持っていない場合は、この酒類販売管理研修を受講して申請資格を満たさなければなりません。もちろん、役員を招聘するという手もありますが、人材が少ないことを考えると、酒類販売管理研修により条件を満たすのが現実的でしょう。

ロケーション

店舗を持ってお酒を販売する場合は、当然ながらその店舗を確保する必要があります。会社と酒類を販売する店舗の住所は、同じでなくてもまったく問題ありません。小規模のビジネスであれば、自宅の一角でインターネットを使って販売する場合もあると思いますが、そのビジネスにマッチした酒販免許を取得して営業すれば、このような営業形態でもまったく問題ありません。ただし、注意が必要なのは飲食店です。すでに会社の事業目的の中に飲食店の経営が含まれていたり、実際に飲食店を営んでいたりする場合、そのロケーションでの免許申請は難しくなります。飲食店で酒類販売業を営むことは禁じられているのです。

また、店舗スペースを借りる際も注意が必要です。会社保有の物件であれば縛りはありませんが、賃貸となると規約があります。物件によっては事業を行うことが禁じられている場合もありますし、特定の事業のみに限定されている場合もあります。書面にて酒類販売が可能であることを証明する必要があるので、時間に余裕を持って準備しましょう。

酒販免許の種類

既存の会社が新規事業のために酒販免許を取得する際の要件や注意事項について解説してきました。ここまで酒販免許と一言で表してきましたが、実はその内容は細分化されていて、事業を行うためには、その事業にあった酒販免許を取得する必要があります。

まず酒販免許は、「酒類小売業免許」と「酒類卸売業免許」の2つに大分されます。小売と卸売を同時に行うにはどちらも必要になるということです。

酒類小売業免許

酒類小売業免許は、一般消費者のほか、飲食店や工場などにお酒を小売りすることが可能な免許です。この酒類小売業免許は、さらに「一般酒類小売業免許」「通信販売酒類小売業免許」などに細分化されています。一般酒類小売業免許は、すべてのお酒を販売可能で、一般消費者や飲食店などに小売りが可能ですが、都府県の壁を越えて取引することはできません。これを行うためには通信販売酒類小売業免許が必要になります。この免許は、インターネットなどの手段で販売を行えますが、扱うことのできるお酒に制限があります。

酒類卸売業免許

酒類卸売業免許は、「全酒類卸売業免許」「洋酒卸売業免許」「ビール卸売業免許」「輸出入酒類卸売業免許」「自己商標酒類卸売業免許」「店頭酒類卸売業免許」などに細分化されています。これらの内、全酒類卸売業免許を取得することはかなり厳しい状況です。洋酒卸売業免許では、ウイスキーやワイン、ブランデー、スピリッツなどの卸売業を行うことができます。輸出入酒類卸売業免許を取得すると、海外からお酒を輸入して国内の業者に卸売したり、その逆に海外の業者にお酒を輸出、卸売することが可能になります。
自己商標酒類卸売業免許は自社で商標登録している名称を用いた酒類の卸売をすることができます。これは日本酒でもワインであってもどんなお酒でも構いません。
店頭酒類卸売業免許はどんなお酒でも卸売することが可能ですが、免許を取得した店頭だけでさらに会員にしか卸売することができない免許になります。

酒販免許の取得は専門としている行政書士に相談を

酒販免許の取得は、このようになかなか要件が厳しいのが現実です。新規事業として酒販免許取得を考えるのであれば、専門家に相談することが第一歩となるでしょう。酒販免許の専門家がいる税務署や、全国的にも酒販免許に強い当事務所に相談するのがおすすめです。

まとめ

既存ビジネスの新展開のために酒販免許を取得することは可能です。ただし、ここまでご説明してきたように、その要件はなかなか複雑です。これまでに酒販ビジネスに関わったことのないスタッフや経営陣ばかりでは、手続きを進めることも大変です。最初にやるべきことは、税務署、もしくは行政書士に相談して会社の財務状況や経営陣の人選についてのアドバイスをもらうことです。専門家にアドバイスしてもらうことで、実現可否もわかりますし、その先のさまざまな準備や手続きに関してもスムーズに行えるようになります。

著者情報
行政書士 那須隆行
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2009年1月行政書士事務所開業 ミライ行政書士法人代表。
行政書士業務の中でも専門的に 酒類販売業免許申請を代行して います。
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