フランスへ日本酒・焼酎を輸出するためには
日本の伝統酒である「日本酒(清酒)」や「焼酎」は、和食ブームや日本文化への関心の高まりとともに、フランスをはじめとする欧州(EU)市場で着実に需要を伸ばしています。
しかし、フランスへ酒類を輸出・販売するためには、日本国内での免許取得だけでなく、EU・フランス固有の法律(輸入ライセンス、容量規制、ラベル表示義務、税制など)を正しく理解し、クリアしなければなりません。
本記事では、最新の貿易協定や法改正を反映し、フランスへ日本酒・焼酎を輸出する際の具体的な手続きと注意点をわかりやすく解説します。
1. 日本国内で必要な手続き:輸出酒類卸売業免許
日本国内から海外へお酒を継続して輸出・販売する場合、酒税法に基づき「輸出酒類卸売業免許」の取得が必要です。
- 概要:自社製造以外の酒類を、海外の事業者へ輸出卸売りするために必要な免許です。
- 注意点:「一般酒類小売業免許」や「通信販売酒類小売業免許」では海外への輸出卸売りを行えません。申請にあたっては、人的要件、場所的要件、経営基礎要件、需給調整要件(取引先の確保など)を満たす必要があります。
2. フランス現地での販売ライセンス(事業者側の規制)
フランスでお酒を輸入・販売する現地事業者(インポーターや酒販店)は、租税一般法典(CGI)および公衆衛生法典に基づき、適切なステータスやライセンスを保持している必要があります。
主なステータス分類
- 認可倉庫業者(entrepositaire agréé): 未納税で酒類を保管・移動するための税務ステータス。
- 飲料小売業者(débitant de boissons): 消費者に直接販売・提供するためのライセンス。
飲料のグループ分類とライセンス
フランスの公衆衛生法典(L3321-1条)では、アルコール飲料が以下のカテゴリに分類されます。
| グループ | 該当する酒類 | 必要なライセンス概要 |
|---|---|---|
| 第3グループ | 醸造酒(ワイン、ビール等)、18度以下の甘味果実酒等 | Licence III(中型ライセンス) |
| 第4・5グループ | 蒸留酒(焼酎、ウイスキー、ラム等)、その他のアルコール飲料 | Licence IV(大ライセンス / Grande Licence) |
※日本酒(清酒)は醸造酒として取り扱われますが、焼酎(蒸留酒)は第4〜5グループに分類されるため、現地の現地パートナーが「Licence IV」等の適切なライセンスを所持しているか事前確認が必要です。
3. 容器・容量規制(EU指令と日本酒・焼酎の違い)
EU域内(フランス含む)に流通させるパッケージ容量には、酒類の種類によって厳しい規制があります。
① 焼酎(蒸留酒)・梅酒(高度数)の容量規制
EU指令(2007/45/EC)に基づき、スピリッツ類(焼酎など)や一部の混成酒は、小売可能な標準容量が以下のように厳格に限定されています。
- 規定容量:100ml / 200ml / 350ml / 500ml / 700ml / 1,000ml / 1,500ml / 1,750ml / 2,000ml
【重要】日本の一般的な「四合瓶(720ml)」の焼酎は、EU市場の小売用としてはそのまま販売できません。フランスへ輸出する場合は、700mlボトルや500mlボトル等で充填・ボトリングするか、レストラン等での飲食店提供用(グラス提供等)に限定する必要があります。
② 日本酒(清酒)の容量規制
日本酒(醸造酒)については、醸造アルコールを添加した商品であっても「清酒としての特性」を有している限り、蒸留酒の容量規制からは除外されます。そのため、日本酒であれば720ml(四合瓶)や1,800ml(一升瓶)のままでも問題なく輸出・流通が可能です。
4. 販売時のラベル表示規制(フランス語表記必須)
フランスで一般消費者向けに流通させる酒類には、EU食品情報規制(FIC規則 No 1169/2011)およびフランス消費法典に基づき、フランス語でのラベル表示(バックラベル貼り等)が義務付けられています。
主な必須表示項目
- 法定品名:
- 純米酒等(アルコール無添加):
boisson fermentée à base de rizまたはsaké - 醸造アルコール添加酒:
boisson fermentée à base de riz avec adjonction d'alcool+saké - 焼酎(蒸留酒):
boisson spiritueuse
- 純米酒等(アルコール無添加):
- 原材料名・アレルゲン表示:使用原材料の明記。アレルゲン物質(該当する場合)の強調表示。
- アルコール分:アルコール度数(% vol)を小数点以下1桁まで正確に記載(例: 15.5% vol)。範囲表示(15〜16度など)は不可。
- 内容量(正味量):ml または cl 表示(例: 70 cl, 720 ml)。
- 事業者情報:EU域内に所在する製造者、ボトリング業者、または責任販売者(輸入業者等)の名称および住所。
- 原産国:「原産国:日本(Produit du Japon / Origine : Japon)」の記載。
- ロット番号:追跡のための「L」から始まるロット識別番号。
- 妊婦向け警告マーク/警告文(必須):フランスでは、妊娠中の飲酒防止に関する警告ピクトグラム(妊婦のお酒禁止マーク)または以下の規定文章の掲載が義務付けられています。
「La consommation de boissons alcoolisées pendant la grossesse, même en faible quantité, peut avoir des conséquences graves sur la santé de l’enfant.」
(訳:妊娠中のアルコール摂取は、少量であっても胎児の健康に深刻な影響を与える可能性があります。)
5. 関税・内国消費税(酒税・VAT)
① 関税率(日EU・EPA適用)
日EU・EPA(経済連携協定)の発効により、日本からEU(フランス)へ輸出される日本酒(HS 2206.00)および焼酎(HS 2208.90)の関税は完全に撤廃(関税率 0%)されています。
※EPAの適用を受けるためには、原産地証明等の適切な手続きが必要です。
② 付加価値税(VAT / TVA)
フランスにおける標準VAT(TVA)率は 20% です。(お酒類は軽減税率の対象外です)
③ 酒税(Droit d’accise)
フランス国内に輸入・流通する際、アルコール度数や分類に応じた酒税(消費税)が課されます。
- 日本酒(醸造酒):アルコール度数に応じて一定額(100Lあたり)の酒税が課されます。
- 焼酎(スピリッツ):純アルコール100Lあたりの固定税率に基づき課税されます。
- 高度数アルコール課税:アルコール度数が25度を超えるスピリッツには、社会保障目的の追加税(Cotisation de sécurité sociale)が加算されます。
まとめと成功のためのポイント
フランスへ日本酒や焼酎を輸出する際は、以下のポイントを事前にクリアしておくことが成功の鍵となります。
✔ 輸出チェックリスト
- 日本国内で「輸出酒類卸売業免許」を取得しているか
- フランスの現地輸入パートナーが適切な販売ライセンス(Licence IV等)を保有しているか
- 焼酎の場合、700ml等のEU指定容量ボトルを用意できているか(720ml小売不可への対応)
- フランス語のラベル表示(妊婦警告マーク、事業者住所等)が要件を満たしているか
- 日EU・EPAの手続きを行い、関税0%の優遇を適用できているか
専門的な各種手続きや法規制の適合確認については、JETRO(日本貿易振興機構)の最新情報や、酒類専門の行政書士・貿易実務の専門家へご相談されることをおすすめします。

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