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新会社で酒販免許をとろうと思ったら絶対に知っておきたいこと
2023年02月10日(金)

これから新しく立ち上げる会社でも酒販免許は取得可能です。酒販免許を取得するには実績が必要だと考えている方も多いようですが、実際に酒販免許を新規で申請する会社の多くが新しい会社です。この記事では新会社設立時に酒販免許を取得するための準備や方法について解説しています。ポイントを押さえれば新しい会社でも酒販免許は問題なく取得できますので、ぜひ参考にしてください。

新会社でも酒販免許は取得可能

酒販免許は、正式には酒類販売業免許と呼ばれるもので、文字どおり、お酒を販売するために必要な免許です。この酒販免許にはいくつか種類があり、販売しようとしている業態やお酒の種類により、必要な免許が異なることに留意する必要があります。酒類免許はかなり細かく分類されているのですべてをご紹介することは避けますが、大雑把に分けると「酒類卸売業免許」と「酒類小売業免許」の2種類となります。その他酒類販売代理業免許、酒類販売媒介業免許もあります。

すでに存在している会社で、新たに酒販免許を取得しようとする場合、会社の財務状況が厳しくチェックされます。そのため、過去3期の赤字が大きい場合や直近期における繰越の赤字が大きいと、酒類免許を取得することは原則できません。その点、新しく立ち上げる会社の場合は、決算実績がないので、当然、この項目は審査されません。つまり酒販免許は、現在の資金や役員の経験が重要視されることになりますが、これまでずっと営業してきた実績のある会社よりも、過去の実績を審査されることがなく、その点だけで言えば新しく立ち上げる会社のほうが取得しやすいのです。

酒販免許取得のチェック事項

このように財務面のチェックがないため、新規で立ち上げる会社のほうが酒販免許取得において既存の会社よりもメリットがあることは確かです。しかし、ただ免許の取得申請をすれば取得できるというほど甘くはありません、免許をとるためには以下の要件が必要です。

事業計画がないと取得不可

先にご紹介したとおり、酒販免許には「酒類卸売業免許」と「酒類小売業免許」があります。酒類卸売業免許は、お酒の卸売業者、小売業者を対象とした免許です。一方、酒類小売業免許は、お酒を店頭で販売する業者のための免許で、さらに細かい分類のなかには、ネットショップなどを対象とした、幅広い地域に販売する業者のための免許もあります。すなわち、どのような形で事業を行うかによって必要な免許が異なるため、綿密に事業計画を立てる必要があるのです。このなかには販売計画(いくらで仕入れていくらで売るのか、どの程度の販売量を見込んでいるのかなど)も含まれます。これから始める商売をできるだけ詳細にイメージし、事業計画に落とし込んでいきましょう。

取得のための条件

財務チェックが入らないとはいえ、新規に立ち上げる会社の経営者には、それなりの条件が求められます。納税状況も当然チェックされ、過去に破産し、今なお復権していない場合は、酒販免許を取得することは不可能です。これは経営基礎要件と呼ばれるもので、酒販免許取得に限って問われる要件ではありません。酒販免許を取得するには、経営者となる人物に対する審査があることに留意しましょう。

そのほかに経営者は、酒類を販売するために必要な知識や経験を身に付けている必要があります。したがって、経営者がお酒に関してまったく素人では酒販免許を取得することはできません。免許取得前に、各地で開催される「酒類販売管理研修」を受講することで、これを満たすことができることもあります。

新会社で酒販免許を取得するための準備

ここからは、新会社を立ち上げて酒販免許を取得するための準備について説明していきます。ポイントを押さえて確実にステップを踏んでいくことで、確実に酒販免許を取得しましょう。

税務署か行政書士に相談

日本で酒類の販売について取り仕切っているのは税務署です。酒類販売業を営むことを決めたら、まず相談すべきは税務署です。税務署には酒類指導官という酒販の専門部署がありますので、ここに連絡をとって相談しましょう。

税務署を訪れる前に、できる限り細かく新事業について説明できるようにしていくと、相談はより有意義な時間になります。もちろんこの段階ではわからないことも多いはずですが、それは問題ありません。それを確認する機会が、この税務署での相談です。

ちなみにこのような事前相談は、税務署への相談だけではなく、当事務所に相談することも可能です。全国対応しておりますのでお気軽にご相談ください。ご相談はこちら

事業目的をはっきりさせる

酒販免許を新しく立ち上げる会社で取得するには、事業目的をはっきりさせる必要があります。これはどんな事業を立ち上げる場合でも共通することです。具体的にいうと、新会社の事業目的の項目に、酒類販売に関する記載をしなくてはなりません。たとえば、「酒類の販売」などのように記載します。

事業目的の記載では注意しなければならない点もあります。もしも飲食店の経営も同時に考えているのであれば、事業目的にこれも盛り込まなければなりません。しかし、酒販免許を飲食店がとることは、お酒の仕入れルートの管理なども事業計画に盛り込まなければなりません。「やる予定はないが一応入れておこう」程度の場合は事業目的には含めないようにしましょう。また、この点について指摘されたら、「今はやらない」と答えておきましょう。

役員構成

会社には経営陣が必要となりますので、役員を決めなければなりません。すでにご紹介したとおりですが、経営陣には、実際にビジネスを運営した経験があること、そして酒販業界における経験、知識などが要求されます。これらは役員のうち1名だけ経験や知識があればよく、もし業界経験がない場合は、前出の酒類販売管理研修を受けることで業界経験として判断される場合もありますが、「必要最低限」という判断になります。
また、フランチャイズで始めようとする場合には、本部である会社が経験や実績があるかどうかにより判断されます。

新会社の場所

酒類販売免許を取得する住所と新しい会社の登記場所は、同じ場所でも別の場所でも問題ありません。ただし、免許の取得場所はかなり重要な要素なので、熟慮する必要があります。この点については、税務署や行政書士事務所に相談して、どのような場所に設定すればいいのか確認しておきましょう。具体的には、建物所有者だけでなく土地の所有者にも酒類の販売を行うことについて承諾をもらっておかなければなりません。

届出

これは新会社を設立したら必ず必要になる作業です。会社の住所地の役所、税務署、県税事務所などへ、会社の設立を届け出る必要があります。酒類販売免許の取得には納税証明書が必要となりますので、これを忘れると免許の取得申請ができません。

酒販免許取得が難しいケース

新会社を立ち上げて酒販免許を取得しようと考えても、条件によっては難しいケースもあります。既存の会社のように財務状況をチェックされることはないとはいえ、やはりお金に関するチェックは新会社の場合でも当然あります。ここからは、酒販免許取得を難しくする要素についてご紹介していきます。

まずは資本金額です。会社設立に際し、資本金額の規定はとくにありません。酒販免許取得を考えるなら「2ヶ月分の仕入資金」という基準がありますので、あまりにも少ないと資金の調達が必要となります。これには国税庁が定めている企業の財産要件が関わっています。この財産要件は、既存の会社が酒販免許を取得する際にも適用されるもので、「販売能力及び所要資金等の検討」という項目にある、

・最終事業年度以前3事業年度のすべての事業年度においてて資本等の額の 20%を超える額の欠損を生じている場合

・最終事業年度における確定した決算に基づく貸借対照表の繰越損失が資本等の額(資本金、資本剰余金及び利益剰余金の合計額から繰越利益剰余金を控除した額)を上回っている場合

(参考 一般酒類小売業免許審査項目一覧表:https://www.nta.go.jp/taxes/sake/menkyo/shinki/hambai/s05.pdf

により、あまりにも資本金額が少額では要件をクリアすることができないのです。5万円の資本金でも会社は設立できますが、酒販免許を申請するなら、資本金額はなるべく多く用意するに越したことはありません。

もう一点、これは少しテクニック的なことになりますが、新規に会社を設立する場合は、決算までの期間をなるべく先に設定することをおすすめします。設立からすぐに決算という流れになると、税務署はその数字を額面どおりに受け取ってしまう可能性があります。免許の申請時と決算が重ならないようにすることで、不要なリスクを避けることが出できます。

しっかり準備すれば酒販免許はとれる

ここまでご紹介してきたように、新規に立ち上げる会社でも、周到に準備をすることで酒販免許を取得することは可能です。酒販免許を取得して、新規に酒販ビジネスを立ち上げようと考えている方は、まずは税務署、または酒販免許に強い、当事務所にご相談ください。

著者情報
行政書士 那須隆行
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2009年1月行政書士事務所開業 ミライ行政書士法人代表。
行政書士業務の中でも専門的に 酒類販売業免許申請を代行して います。
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