タイへ日本酒・焼酎を輸出するには?要件・税金・ラベル規制・ライセンス解説
タイは和食文化の定着や日本食レストランの増加に伴い、日本酒や焼酎の需要が急速に拡大している非常に魅力的な市場です。
しかし、タイへ日本酒(清酒)や焼酎を輸出・販売するためには、日本国内での適切な酒類免許の取得だけでなく、タイ現地での輸入ライセンス、ラベル表示規制、複雑な酒税制度(物品税等)を正しく理解しておく必要があります。
本記事では、最新の法令・実務動向に基づき、タイへの酒類輸出に関する必要な手続きや各種規制・税金について分かりやすく解説します。
- 免許: 日本側で「輸出酒類卸売業免許」、タイ現地輸入業者側で「第1類酒類販売ライセンス(Type 1 License)」が必要。
- 関税・原産地証明: 日タイEPA(JTEPA)または日ASEAN EPA(AJCEP)の活用により、日本酒・焼酎ともに関税率0%が適用可能(※特定原産地証明書が必要)。
- ラベル表示規制: 財務省物品税局(Excise Department)が規定するタイ語警告文や推奨小売価格(SRP)等の事前承認・表示が必須。
1. 日本側で必要な手続き:酒類販売業免許
日本国内からタイへ酒類を継続的に輸出するためには、酒税法に基づき管轄の税務署から「輸出酒類卸売業免許」を取得する必要があります。
- すでに酒類製造免許をお持ちの蔵元・メーカーであっても、自社製品以外の酒類を他社から仕入れて輸出する場合は別途「輸出酒類卸売業免許」が必要です。
- 国内向けの酒類販売業免許(一般酒類小売業免許など)のみでは海外への輸出取引は行えません。
2. タイ現地側で必要なライセンスと輸入要件
タイ側で日本酒・焼酎を輸入・卸売販売できるのは、タイの法令に基づき適切なライセンスを取得している事業者に限られます。
① 第1類酒類販売ライセンス(Type 1 Liquor License)
タイでアルコール飲料を輸入できるのは、財務省物品税局(Excise Department)から「第1類酒類販売免許(輸入および年間100リットル以上の卸売が可能)」を取得している現地事業者のみです。
② 輸入許可申請(事前輸入届出)
現地輸入業者は、タイへ酒類を到着させる都度(船積み前)、以下の書類等を添えて財務省物品税局へ輸入許可申請(Import Permit)を行います。
- 輸入許可申請書(Excise Form)
- インボイス(Invoice)およびパッキングリスト(P/L)
- 事前承認済みのタイ語表示ラベル(サンプル)
- 特定原産地証明書(EPA Form JTEPA または Form AJ)
- 成分分析表(Certificate of Analysis: CoA)
- その他輸入業者の法人登記書類・酒類ライセンスのコピー
かつて東日本大震災に伴い一部の県(宮城、福島、茨城、栃木、群馬、千葉、神奈川、静岡など)産の酒類に義務付けられていた「放射性物質検査証明書」は、タイ保健省公衆衛生局(FDA)による規制見直し・撤廃が進んでおり、現在は通常の食品衛生基準に準じた輸入手続となっています。
3. タイ語ラベル表示規制と注意警告
タイへ酒類を輸入・販売する前に、タイ財務省物品税局および保健省アルコール飲料コントロール委員会の基準に合致した「タイ語ラベル(バックラベル)」を作成し、事前承認を得る必要があります。
ラベルに記載が必要な主な項目
- 品名(商品名): 清酒(Sake)、焼酎(Shochu)など
- アルコール度数(% vol): 明確な数値表記
- 内容量: ml または cl
- 輸入業者および製造業者の名称・住所
- 推奨小売価格(SRP:Suggested Retail Price): 物品税算出の基準値
- タイ語の飲酒警告文(Mandatory Warning Text): 法律で定められたフォントサイズおよび文言(例:「20歳未満の飲酒禁止」「飲酒運転禁止」等)
※警告ピクトグラム(図記号)の掲載基準や文言規定は頻繁にアップデートされるため、現地輸入業者と事前に最新デザインの確認・擦り合わせを行うことが極めて重要です。
4. 関税および内国諸税(タイの酒税構造)
タイにおける酒類の輸入・販売に関わる税金は、「関税」「物品税(酒税)」「地方税・各種基金」「付加価値税(VAT)」で構成されています。
① 関税(Import Duty)
日タイ経済連携協定(JTEPA)または日ASEAN包括的経済連携協定(AJCEP)を適用することで、関税は0%となります。
| 酒類区分 | HSコード | 基本税率(MFN) | EPA適用税率(JTEPA / AJCEP) |
|---|---|---|---|
| 日本酒(清酒) | 2206.00 | 60% | 0%(特定原産地証明書の発行が必要) |
| 焼酎(単式・複式蒸留) | 2208.90 / 2208.70等 | 60% | 0%(特定原産地証明書の発行が必要) |
② 物品税(Excise Tax)および付加価値税(VAT)の構造
タイの2017年改正新物品税法(Excise Act B.E. 2560)により、酒類の物品税は「従価税率(推奨小売価格SRPベース)」と「従量税率(100%アルコール1リットルあたり)」の二段階計算を組み合わせた複合税率が適用されます。
| 税金・基金の種類 | 課税標準 / 税率の概要 |
|---|---|
| 1. 物品税(Excise Tax) |
・従価税:推奨小売価格(SRP ※VAT除く)× 規定税率 ・従量税:アルコール度数(LPA)× 規定税率 ※醸造酒(日本酒)と蒸留酒(焼酎)で税率区分が異なります。 |
| 2. 地方税(Interior Tax) | 物品税額の 10% |
| 3. 健康振興基金(ThaiHealth) | 物品税額の 2% |
| 4. タイ公共放送(TPBS)基金 | 物品税額の 1.5% |
| 5. 高齢者基金(Elderly Fund) | 物品税額の 2% |
| 6. 付加価値税(VAT) | (CIF価格 + 関税 + 物品税 + 各種基金)の 7% |
③ 納税印紙(Excise Stamp)の貼付
通関および税金の納付完了後、タイ物品税局発行の納税印紙(Excise Stamp)を取得し、全商品ボトルに貼り付ける必要があります。現在ではバンコク港等での現地貼り付け作業や指定保税倉庫での管理手続が行われています。
5. タイへの輸出手続きの流れ(まとめ)
日本国内で「輸出酒類卸売業免許」を取得し、輸出対象商品の成分分析や特定原産地証明書(Form JTEPA等)の手配準備を行います。
「第1類酒類販売ライセンス」を所持し、確実な輸入通関と販路を持つパートナー企業を選定します。
推奨小売価格(SRP)を設定し、警告文を含めたタイ語ラベルの事前承認を物品税局から取得します。
日本で特定原産地証明書を発行し、船積み・輸出通関を行います。
タイ到着後、現地輸入業者が輸入申告、関税(EPA適用で0%)・物品税・VAT等の納付、納税印紙の貼付を行い通関完了となります。
まとめ:成功の鍵は事前の制度確認と現地パートナーとの連携
タイへの日本酒・焼酎の輸出は、EPA活用により関税が0%になる大きなメリットがある一方、推奨小売価格(SRP)に基づく複雑な物品税計算やタイ語ラベル規制など、厳格な法令順守が求められます。
輸出検討の初期段階から、日本側の専門行政書士や税務署への相談、そしてタイ現地で信頼できる輸入パートナーとの連携を密に行うことが、トラブルなくスムーズに事業を展開するカギとなります。

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