酒販情報

INFORMATION
酒販免許に関する情報

目次

新型コロナの影響を受けた場合の酒販免許申請

飲食店や酒屋等の特定の業種に限らず、新型コロナウィルスの影響を受け、売上が下がり経営基礎要件を満たさなくなった場合、酒類販売業免許は申請できるのか・・・

結論から申し上げますと、申請は可能です。

経営基礎要件(経営の基礎が薄弱であると認められる)とは、

・直前期の貸借対照表繰越欠損が資本金+資本剰余金+利益剰余金より多い場合
(簡単に言うと直前期の貸借対照表純資産の部がマイナスでないこと)
・過去3期分連続して資本等(資本金+資本剰余金+利益剰余金)の額の20%を超える損失がある場合

これらに該当すると酒類販売業免許を新規で行うことは難しいです。

 

コロナの影響により、経営基礎要件を満たさなくなった場合

この場合には申請をする前に、申請先の税務署担当の酒類指導官に書類を提出して申請できるかどうか確認が必要となります。

必要な書類について

・新型コロナの影響を受ける前と現状で同じ月数カ月分の売上台帳
・今後5年間の事業計画書
・1年間のキャッシュフロー計算書
・事業資金の証明書類
・事業計画の売上根拠

・その他販売する酒類についての説明書類、酒類販売方法などの説明書類

これらを用意し、事前に酒類指導官へ交渉を行います。

新型コロナの影響を受け、一時的に売上が下がっている場合であれば酒類販売業免許申請は可能です。
事業計画書やキャッシュフロー計算書についても十分説明できるようにしておかなければなりませんので、しっかりとした計画の作成をおすすめいたします。

当事務所ではこのような新型コロナの影響を受け、経営基礎要件を満たさなくなった方の申請も数多く行っておりますので、安心してご相談いただけます。このようなケースでもすべて免許通知となった実績があります。

リサイクルショップで取得する代表的な酒販免許

2010年頃からリサイクルショップや買取専門店、質屋などで酒販免許を取得されるケースが少しずつ増え、今では当たり前のように取得されるようになりました。以前は通信販売酒類小売業免許が多かったのですが、最近では同業者間取引をするために、洋酒卸売業免許店頭販売酒類卸売業免許の取得も多くなってきました。通信販売はヤフオクなどのインターネットオークションやメルカリ、楽天などでの販売をするために必要な免許です。しかし、リサイクルショップや買取専門店、質屋などでは蔵元などの製造元から課税移出数量3000kl未満の証明を取得することは難しく、通信販売で国産酒の販売をすることが非常に難しいです。そこで販売場と同一都道府県内の通信販売を行うために一般酒類小売業免許を取得するケースが一般的でした。

最近では、すぐに現金化が見込めるため同業者間での販売も増えてきており、洋酒卸売業免許を取得されるケースも多いです。洋酒とは国産、輸入酒を問わずワインやウイスキー、ブランデーなどの販売ができます。
店頭販売酒類卸売業免許は店頭での卸売に限りますが、すべての酒類を同業者へ販売ができるため、日本酒や焼酎なども販売することができます。

酒類を買取される際に注意していただきたいこととして、何度も同じ人から買取をしてはならないということです。
何度も同じ人から買取をされると、酒類の買取依頼された方にも酒販免許が必要となります。何度も同じ人から買取をしていると無免許販売を助長したとして処分されてしまいますので注意してください。

 

買取専門店などの通信販売酒類小売業免許について

通信販売酒類小売業免許ですが、専門家と言っている人も含めほとんどの方が勘違いされておりますが、通信販売の定義としては、

・2つ以上の広域な都道府県在住の消費者を対象として販売を行う(例えば、東京都と千葉県を対象にして)
・カタログやインターネットサイト内で完結する販売方法によって行う
・宅配業者などに配達を委託する

この3つの条件が揃って初めて酒税法及び酒税法解釈通達上の通信販売となります。
ひとつでも上記の条件に該当しなければ通信販売ではなく、例えば販売場と同じ都道府県内在住している消費者限定の通販を行う場合には、「一般酒類小売業免許」が必要となります。
その他、申込は通販サイトでも店頭に購入に来てもらうことや販売業者が配達を行う場合には通信販売に該当しません。

リサイクルショップや買取専門店などで一般消費者対象に販売を行う場合、買い取った酒類が輸入酒であれば、通信販売酒類小売業免許を取得して販売を行い、ウイスキー、日本酒、焼酎などの国産酒を買い取った際には、一般酒類小売業免許を取得して販売を行うことが最も一般的です。

 

買取専門店などの洋酒卸売業免許について

洋酒卸売業免許などの卸売業免許も最近は経験要件が緩和されてきており、酒類販売業に直接従事した経験がなくても取得できるようになりました。この洋酒卸売業免許で酒販免許取得している同業者に販売することができるようになります。
洋酒とは、ワインなどの果実酒、ウイスキー、ブランデー、スピリッツその他の醸造酒、発泡酒、雑酒、粉末酒を販売することができます。ただ雑酒(昔の紹興酒など)、粉末酒(これは見かけないと思います。)は現在ではあまりありません。
もちろん国産のウイスキーなども販売することができます。

リサイクルショップや買取専門店などでは、FC本部へ販売する場合や酒類買取を専門にしている同業者へ販売を行うことができます。すぐに現金化することもでき、また3年に1回酒類販売管理研修を受講しなくても良いため、最近では洋酒卸売業免許も通信販売酒類小売業免許と一緒に取得されるケースが増えてきております。

 

買取専門店などの店頭販売酒類卸売業免許について

あまり馴染みがない酒販免許になりますが、日本酒や焼酎など洋酒卸売業免許で同業者へ販売を行うことができない酒類を卸売することができます。これには免許取得した業者が販売業者の会員となり、会員に対して店頭で卸売をしなければならないという条件があります。

すべての酒類を卸売することができますが、会員に対して店頭でしか卸売することができません。万能な全酒類卸売業免許もありますが、毎年9月に抽選に当選しなければならず、また年間100kl以上の販売数量を見込んでいなければなりませんので非常にハードルが高い免許になります。
この全酒類卸売業免許は都道府県単位で免許数が決まっているため、販売場の都道府県から別の都道府県へ移転する場合も抽選に当選しなければなりません。

 

その他取得された酒販免許について

リサイクルショップや買取専門店などの会社でその他に取得された酒販免許は「酒類販売媒介業免許」があります。オークション(いわゆる競り売り)を行う場合には、売りたい会社と競り落とした会社や消費者の媒介を行うため、酒類販売媒介業免許が必要となります。もちろん売りたい会社の酒販免許は確認する必要があります。

この酒類販売媒介業免許の取得はなかなかハードルが高いですが、その取得が不可能というわけではありませんので、詳しくはお問い合わせください。

 

裏ラベルのない酒類の買取

よく質問のある事項で、裏ラベルのない酒類いわゆる海外で販売されている酒類(海外旅行で個人消費目的で免税の範囲内でのお土産)について、買い取った場合、販売ができるかについて聞かれることがあります。
ただ単純にラベルを貼ればいいかと言うとそうではありません。

最近は酒類の買取が認知されてきており、海外旅行で現地の免税店から酒類を購入して、それが不要となりリサイクルショップや買取専門店へ買取依頼される方もいるかと思います。
しかし、こちらについては売ることが基本的にできません。

なぜなら、もともと個人消費目的で免税の範囲内を利用して輸入された酒類なので、それを売るためには輸入からやり直す必要があります。
商用目的での輸入申告をしてから、ラベル表示の届出をするという手続を取らないと、たとえ不要となったものを処分する目的でも買取専門店へ買取依頼することはできません。
また輸入酒類卸売業免許が必要となる場合もあります。

買取専門店側も買い取ったはいいが、その販売ができないということになりかねません。
このような裏ラベルのない酒類は買い取らないほうがよいです。

 

旧酒販免許の取得方法

現在、取得できない酒販免許があります。
免許条件が現在のように『酒類の販売は通信販売を除く小売に限る。』ではなく『酒類の販売は小売に限る。』と記載されている免許になります。
いわゆるゾンビ免許と呼ばれた免許ですが、もう新規免許取得はできません。

では、どのようにして取得したらいいのでしょうか。

1.法人を買収する。
2.吸収合併、新設合併する。

など想定されますが、
買収する際に注意していただきたい事項として、今現在通信販売を行っているのかどうか確認してください。
個人事業から法人成りされる際でもそうですが、現在通信販売を行っていない場合には『酒類の販売は通信販売を除く、小売に限る。』という条件になってしまい、旧酒類小売業免許は取得できません。
そのため、合併の際でも同じように通信販売の実績を作ってから手続きを進めていくようにしましょう。

どのくらい実績があればよいのか・・・
こちらについては、税務署によって判断が異なりますが、次回の酒類販売数量報告までとか1年くらいが多いです。

 

酒税法解釈通達の要件について

  1. 合併等に伴い、酒類販売業免許新規申請と同時に免許取得している会社の既存販売場の酒類販売業免許の取消申請を同時に提出する。
  2. 免許取得している会社の既存販売場と同じ場所で営業するように申請する。
  3. 免許取得している会社の既存販売場が1年以上酒類の販売を行っていないなど休業していないこと。
  4. 酒類販売業免許新規申請する存続会社が経営基礎要件を満たしていること。

これらを満たしていないと現在の酒税法上の販売条件になってしまいます。
この合併等によって申請される場合には、申請に至る経緯や内容等について詳しく確認されます。

 

買収された際の手続

こちらは実際の案件ごとに異なるので、一概には言えませんが、

1.酒類販売業免許移転許可申請
2.酒類販売業免許新規申請
3.酒類販売業免許取消申請

他にも蔵置所設置報告書や異動申告書も必要な場合もあります。

また合併される場合には、その合併方法により手続きの流れは異なりますので、税務署へ旧酒販免許取得の意思を伝え、手続きを慎重に進めていく必要があります。

このような難しい手続は酒販免許を専門としている行政書士にお任せください!

 

既存の会社で酒販免許を取得するために知っておきたいこと

インターネットの普及により、ネットショップでお酒を買う方も増えています。ネットでお酒を販売するために酒販免許を取得しようという個人の方も増えているようです。また、最近ではこのお酒のネット販売や海外への輸出を新たなビジネスチャンスと考えている会社も多くあるようです。日本でお酒を販売する場合は、かならず酒販免許を取得しなければなりません。酒販免許は、さまざまな要件を満たして初めてとれるものですが、会社の状況を確認し、準備をしっかり行えば、異分野からであっても取得することは可能です。この記事では、酒販免許についてくわしく説明するとともに、酒販免許取得の条件や事前準備、頼りになる酒販免許のプロについてご紹介していきます。

 

酒販免許は会社の新規事業用でも取得できる

会社を新たに立ち上げる際に酒販免許を取得するケースが多くありますが、すでに営業している会社でまったく新しい事業を行うために酒販免許の取得を検討しているという会社も数多くあります。もちろん、このような場合でも酒販免許を申請し、取得することはできますが、税務署では取得要件を設けていて、これに適合した個人や法人でないと免許を取得することは不可能です。確実に免許を取得するためには、まずは税務署か行政書士に相談して、免許取得の実現可否や、取得するための道筋をはっきりさせましょう。

 

酒販免許とは

酒販免許(酒類販売業免許)とは、飲むことを目的とした度数1%以上のアルコールを販売するために必要な免許です。飲用のアルコールなので、これは一般的には「お酒」のことであり、医療で使用するようなアルコールは酒販免許の対象ではありません。お酒を販売するといっても、レストランやバーなどの飲食店でアルコールを出すことは「販売」ではないと定義されているので、このようなお店でお酒を出す場合は、酒販免許は不要です。ただ、酒販免許と一口で言うもののその内容は細かく分かれているので、これから始めようと考えているビジネスに適合した酒類の免許を取得する必要があります。

 

酒販免許の種類

酒販免許は、小売を行うための「酒類小売業免許」と、卸売を行うための「酒類卸売業免許」の2種類に大きく分けられます。そしてその中でさらに細分化されているので、この中から新たに始めるビジネスに適したものの取得申請を行います。

 

酒類小売業免許

・一般酒類小売業免許

一般酒類小売業免許は、消費者やレストラン、居酒屋などの飲食店、お酒を使用してお菓子を作る工場などを相手に小売販売が行える免許です。お酒ならなんでも販売することが可能ですが、カタログやインターネットを用いて販売しない場合には、他の都道府県でも販売が可能です。逆に言えば通信販売にあたるような都道府県の境界を越えて、カタログやホームページなどを用いて、配送により販売することはできません。新規事業でこれを行いたい場合は、通信販売酒類小売業免許を取得する必要があります。

通信販売酒類小売業免許

インターネットやカタログを利用してお酒を販売するための免許です。都道府県の境界を越えてお酒を販売することができますが、販売できるアルコール飲料の種類が限定されるというデメリットもあります。輸入されたお酒、もしくは年間課税移出数量が3000キロリットル未満の国産アルコール飲料なら、この免許で取り扱い可能です。

 

酒類卸売業免許

洋酒卸売業免許

洋酒卸売業免許は、ワインやウイスキーなどを国内の業者に卸売するために必要な免許です。

輸出入酒類卸売業免許

輸出入酒類卸売業免許は、海外からお酒を輸入し日本の業者に卸売をしたり、日本で仕入れたお酒を輸出して海外の業者に販売したりするために必要な免許です。

全酒類卸売業免許

これは、アルコール飲料ならなんでも卸売できる免許ですが、現在、この免許を手に入れることは年に1度の抽選により件数も少ないため、非常に難しくなっています。

ビール卸売業免許

こちらも文字どおり、ビールを卸売するために必要な免許です。抽選により免許付与されますが、抽選申込者が少ないため取得できる可能性は十分にあります。

・その他

そのほかに、店頭販売酒類卸売業免許自己商標酒類卸売業免許など、特別なニーズに対応するための卸売用の免許があります。

 

酒類販売代理業免許、酒類販売媒介業免許

その他に、酒類販売代理業免許酒類販売媒介業免許というものもあります。酒類販売代理業免許は現在その取得は非常に難しくなっています。これは税務署側が免許付与しないようにしているためです。
酒類販売媒介業免許は、お酒の販売で「いわゆる競り売り」や「コールセンター」などが必要となる免許です。これは取得できますが、その審査に4ヶ月かかることや国税庁の審査もあることから、申請が非常に難しく、専門家と言っている人でも申請したことがない方がほとんどです。

 

酒販免許取得の条件

免許を取得するためには、税務署が定めているさまざまな要件をクリアする必要があります。国としても、税収が滞ってしまうのでは免許を与える意味がありませんので、この要件については申請する側もシビアに考えなければなりません。その中でも主なものが、「経営基礎要件」「人的要件」です。

 

経営基礎要件

免許の取得申請を行う場合、申請を行う者は、「自己破産により法的な処分を受けた過去(直近3年間)」がなく、経営や業界について豊かな知識と経験を持っていなければなりません。

直近の決算にて資本額を上回る繰越損失を出していたり、直近3期の決算で資本額の20%を超える損失を出していたりする場合は、免許を得ることはできません。そのほか、税金の滞納がある場合や、なんらかの理由で銀行との取引を制限されているなどの場合も取得することは不可能です。すでに営業している会社は、決算書の数字がかならずチェックされます。税務署の要件を満たすことができない会社に免許が交付されることは原則としてありません。過去に数回程度ですがこの条件を満たしていなくても免許交付されたケースはあります。

酒類業界での知識や経験もなかなかハードルの高い要件です。過去に業界でビジネスを行っていた、また実際に業界での業務に就いていた人ならこの要件はクリアできます。もちろん、この要件は経営者個人を見るのではなく、税務署も経営陣全体を見て判断しています。そのため、経営陣全体が業界に関するなんらかの知識や経験を持っているのであれば条件をクリアできる可能性は高いといえるでしょう。ただし、現実的にはなかなかこううまくいくことはないと思います。ましてや新規ビジネスのために酒販免許をとろうと考えている会社にとっては、かなり厳しい条件であることは間違いありません。知識や経験の面で要件をクリアすることが難しい場合は、「酒類販売管理研修」の受講で要件をカバーすることが一般的ですが、それにしても審査において有利な条件ではありません。このようなケースは、やはり専門家へ相談するのがベストです。

人的要件

免許を取得しようとする個人や経営者は、人的要件も満たす必要があります。未成年者は酒販免許を取得することは不可能ですし、禁固刑を受けている方も酒販免許を取得することはできません。

 

酒販免許申請のための準備

酒販免許にはさまざまな酒類があり、取得にも条件がある、ということについて説明してきました。ただ、ここまでの説明で「うちの会社は大丈夫そうだ」というのであれば、酒販免許が取得できる可能性は高いといえるでしょう。つづいては、免許申請のために準備すべき事柄についてご紹介します。

事業を行う目的

既存の会社が新たな事業のために免許の取得を申請する際は、すでに入っている場合を除き、事業目的として「酒類の販売」を入れる必要があります。一言入れるだけですが、大きな会社だとこれだけでもさまざまな部署の承認が必要な場合があるので、できるだけ早めに対応しておきましょう。

事業を行う場所

事業を行う場所は、ルールに反しない限り、基本的にはどこでも問題ありません。ただ、その「ルールに反しない」が重要なところではあります。まず、事業の目的として「飲食店の経営」を記載している会社は注意が必要です。なぜなら、酒販免許は基本、飲食店が取得できない免許だからです。申請する際は、この点について説明する必要があります。記載しているだけで予定がないのなら、削除してしまうのも方法のひとつです。

また、店舗やオフィスを借りる場合も注意が必要です。賃貸物件の中には事業用でないものも含まれていますので、物件探しをする際はかならず、酒類販売業を営むことを不動産業者に伝えたうえで探さなければなりません。申請時は酒類販売ができる場所であることを証明しなければならないので、早めに用意しておくといいでしょう。

 

酒販免許取得に際してはかならず専門家に相談を

このように要件が多く複雑な酒販免許取得までの道のり。この道のりを、自信を持って乗り切るには、専門家にサポートしてもらったほうがいいでしょう。既存会社の新規事業として酒販免許を取得するならなおさらです。

税務署

酒販免許に関しては、それぞれの国税の管内に「酒類指導官」がある税務署があります。酒類指導官はお酒に関する税の専門家で、免許取得についても相談可能です。相談の際は、事前にアポイントをとっておきましょう。

行政書士

行政書士は書類作成のプロですが、専門分野を持つ人もいて、酒販分野を得意としている行政書士もいます。行政書士は、申請を受理する側の酒類指導官とは異なり、申請を行う側に立ってアドバイスをくれます。お住まいの地域にも酒販免許に強い行政書士がいるかもしれませんので、ネットなどで調べてみるといいでしょう。

 

まとめ

既存ビジネスであっても酒販免許をとってビジネスの新しい展開に役立てることは可能です。それほど楽な道のりでないことは確かですが、条件さえ満たしていれば免許はとれます。ただ、手続きを自分たちだけで行うことはなかなか難しいので、税務署や行政書士にサポートしてもらうのが現実的です。

 

既存の会社で酒販免許をとりたい!と思ったら知っておきたいこと

新たなビジネス展開の一環として、酒類販売免許の取得を考えている会社の方は、ぜひこの記事を参考にしてください。現在、すでに営業中の会社が酒販免許を取得することは可能です。しかし、知っておくべきこと、準備するべきことはたくさんあります。条件が整っていないのに酒販免許の取得申請をしても、お金や時間を無駄にしてしまうだけなので、この記事でまずはポイントを押さえてください。

 

酒販免許は既存の会社で取得可能

会社の新たな事業展開のために酒販免許の取得を考えているという会社は数多くあります。実際、現在すでに営業中の会社で免許をとることは可能ですが、ハードルは低くはありません。これから酒販免許を取得するなら、最初にすべきことは専任のスタッフがいる税務署、もしくは酒販免許に詳しい行政書士に相談することですが、この記事では既存の会社にて酒販免許を取得する方法についての概要をご紹介していきます。

 

酒販免許取得の条件

酒販免許について取り仕切っているのは税務署です。税務署では、酒販免許を交付する条件を設定しています。さまざまな要件があるのですが、すでに営業している会社が免許を取得する場合は、以下の要件をかならずチェックされることになります。

 

決算書はかならずチェックされる

すでに営業している会社の場合は、これまでに決算を行っていますので、決算書がかならずチェックされます。たとえば赤字続きの会社で免許の取得申請をしても、交付される可能性はほとんどありません。つづいてこの決算書についての内容も含む、酒販免許取得条件について見ていきましょう。

 

税務署が定める取得条件

取得申請が可能な条件としては、以下のようなものがあげられます。

・自己破産により法的な処分を受けた過去(直近3年間)がない人

・直近の決算において、繰越損失が資本額を上回っていない会社

・直近3期のすべて決算において、損失が資本額の2割を上回っていない会社

大雑把ではありますが、これらの要件を満たしていれば、取得申請を行うことが可能です。つづいては、もう少し細かくこれらの要件について解説します。

 

人的要件

人的要件は、個人や経営者に求められるものです。直近3年間で禁固刑を受けている方などは、この人的要件を満たすことができないため、免許の取得申請を行うことはできません。

 

経営基礎要件

免許取得を申請しようとする経営者は、上で紹介している「自己破産により法的な処分を受けた過去がない人」であると同時に、経営について豊富な知識と経験を持っている必要があります。さまざまな要素がありますが、上でご紹介している「直近の決算において繰越損失が資本額を上回っていない会社」「直近3期の決算において、損失が資本額の2割を上回っていない会社」はまさにこの経営基礎要件に当たります。そのほか、「税金を滞納していない」「銀行との取引を制限されていない」などもこの要件に該当します。

経営についての知識や経験に関しては、過去に会社を経営していたというだけでは不十分です。過去に同種のビジネスを営んでいたり、酒販業界での業務を経験したりしている人がこれに該当します。ただ、この要件について、税務署は「人」ではなく「経営陣」の知識や経験を総合的に見て判断します。ひとりの経営者に酒販業界で働いた経験がなくても、ほかの経営者に業界経験があれば、クリアできると考えていいでしょう。誰も業界経験を持っていない場合は「酒類販売管理研修」を受けることで取得申請を行える可能性があります。しかし、税務署によっては厳しく審査されることもあります。現在の経営陣に業界経験がない場合は厳しい審査になりますので、専門家に相談する必要があります。

 

酒販免許取得の準備

ここまでで、酒類販売免許は誰でも取得できるものではないということがおわかりいただけたと思います。しかし、ここまでで条件をクリアしているようなら前途はかなり明るいといえます。ここからは酒販免許取得に向けた準備について解説していきます。

事業の目的

既存の会社が酒類販売免許の取得を申請する場合、事業目的の中に「酒類の販売」を追加する必要があります。(すでに入っているのなら必要ありません)

役員を選ぶ際の注意点

すでにご紹介した「経営基礎要件」があるため、経営者として適切な人物は限られます。とくに難しいのが「経験」の部分です。

申請者等は、経験その他から判断し、適正に酒類の小売業を経営するに十分な知識及び能力を有すると認められる者又はこれらの者が主体となって組織する法人である。

(参考 製造免許等の要件:https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/sake/2-07.htm

とされています。

実際、このような経験や経歴を持つ人物はそれほど多くありません。もう少し詳しく説明すると、申請者は酒販業務に3年以上勤めた経験があるか、調味食品販売業を3年以上経営しているなどの必要があります。

これを補うのが「酒類販売管理研修」です。業界での経験を誰も持っていない場合は、この酒類販売管理研修を受講して申請資格を満たさなければなりません。もちろん、役員を招聘するという手もありますが、人材が少ないことを考えると、酒類販売管理研修により条件を満たすのが現実的でしょう。

ロケーション

店舗を持ってお酒を販売する場合は、当然ながらその店舗を確保する必要があります。会社と酒類を販売する店舗の住所は、同じでなくてもまったく問題ありません。小規模のビジネスであれば、自宅の一角でインターネットを使って販売する場合もあると思いますが、そのビジネスにマッチした酒販免許を取得して営業すれば、このような営業形態でもまったく問題ありません。ただし、注意が必要なのは飲食店です。すでに会社の事業目的の中に飲食店の経営が含まれていたり、実際に飲食店を営んでいたりする場合、そのロケーションでの免許申請は難しくなります。飲食店で酒類販売業を営むことは禁じられているのです。

また、店舗スペースを借りる際も注意が必要です。会社保有の物件であれば縛りはありませんが、賃貸となると規約があります。物件によっては事業を行うことが禁じられている場合もありますし、特定の事業のみに限定されている場合もあります。書面にて酒類販売が可能であることを証明する必要があるので、時間に余裕を持って準備しましょう。

 

酒販免許の種類

既存の会社が新規事業のために酒販免許を取得する際の要件や注意事項について解説してきました。ここまで酒販免許と一言で表してきましたが、実はその内容は細分化されていて、事業を行うためには、その事業にあった酒販免許を取得する必要があります。

まず酒販免許は、「酒類小売業免許」と「酒類卸売業免許」の2つに大分されます。小売と卸売を同時に行うにはどちらも必要になるということです。

 

酒類小売業免許

酒類小売業免許は、一般消費者のほか、飲食店や工場などにお酒を小売りすることが可能な免許です。この酒類小売業免許は、さらに「一般酒類小売業免許」「通信販売酒類小売業免許」などに細分化されています。一般酒類小売業免許は、すべてのお酒を販売可能で、一般消費者や飲食店などに小売りが可能ですが、都府県の壁を越えて取引することはできません。これを行うためには通信販売酒類小売業免許が必要になります。この免許は、インターネットなどの手段で販売を行えますが、扱うことのできるお酒に制限があります。

 

酒類卸売業免許

酒類卸売業免許は、「全酒類卸売業免許」「洋酒卸売業免許」「ビール卸売業免許」「輸出入酒類卸売業免許」「自己商標酒類卸売業免許」「店頭酒類卸売業免許」などに細分化されています。これらの内、全酒類卸売業免許を取得することはかなり厳しい状況です。洋酒卸売業免許では、ウイスキーやワイン、ブランデー、スピリッツなどの卸売業を行うことができます。輸出入酒類卸売業免許を取得すると、海外からお酒を輸入して国内の業者に卸売したり、その逆に海外の業者にお酒を輸出、卸売することが可能になります。
自己商標酒類卸売業免許は自社で商標登録している名称を用いた酒類の卸売をすることができます。これは日本酒でもワインであってもどんなお酒でも構いません。
店頭酒類卸売業免許はどんなお酒でも卸売することが可能ですが、免許を取得した店頭だけでさらに会員にしか卸売することができない免許になります。

 

酒販免許の取得は行政書士に相談を

酒販免許の取得は、このようになかなか要件が厳しいのが現実です。新規事業として酒販免許取得を考えるのであれば、専門家に相談することが第一歩となるでしょう。酒販免許の専門家がいる税務署や、地域の酒販免許に強い行政書士事務所に相談するのがおすすめです。

 

まとめ

既存ビジネスの新展開のために酒販免許を取得することは可能です。ただし、ここまでご説明してきたように、その要件はなかなか複雑です。これまでに酒販ビジネスに関わったことのないスタッフや経営陣ばかりでは、手続きを進めることも大変です。最初にやるべきことは、税務署、もしくは行政書士に相談して会社の財務状況や経営陣の人選についてのアドバイスをもらうことです。専門家にアドバイスしてもらうことで、実現可否もわかりますし、その先のさまざまな準備や手続きに関してもスムーズに行えるようになります。

 

飲食店でお酒の小売をしたいと思ったら絶対知っておくべきこと

レストランやバーなどを経営していてお酒をテイクアウト販売したいと考えたことがある方は多いと思います。

「お酒を売ることに何か問題があるのでしょうか?」と思った方…実は酒税法により定められたルールを守らないと「売る」ことはできません。レストランやバーなどの飲食店では、お酒を「提供」しているのであって、基本的に「売る」ことはできないのです。お酒は国にとって税収の源です。また、この業界は小売業者、卸売業者、飲食店、一般消費者などが複雑になっているため、ルール作りが非常に大切なのです。この記事では、すでに飲食店を経営している方で、さらにお酒を販売しようと考えている方に、知っておくべきことについてご紹介しています。

 

飲食店でのお酒の小売も可能

ここで、飲食店でお酒を提供することと売ることの違いをご説明しておきましょう。飲食店でもビールやウイスキー、焼酎などのアルコールを飲むことはできますが、飲食店では酒類の栓は開けられた状態で出てきます。チューハイやハイボールも作られた状態で出てきます。これらはビンや缶がそのまま出てくることはありません。すなわち、お酒は提供されているのです。お酒を「売る」ことは、ビンや缶のまま、開栓せずに売ることを指します。そのため、通常はレストランやバーで「このウイスキー、おいしいし珍しいから宅飲み用に買いたい」と思っても、それは不可能です。売ってしまったらお店のオーナーは酒税法違反ということになります。

 

飲食業許可と酒類小売業免許

このように、飲食店では基本的にアルコールを売ることはできません。飲食店で必要なのは「飲食店営業許可」です。この許可を得ると、お客さんに料理や酒類を提供することが可能になります。一方、お酒の販売に必要なのは「一般酒類小売業免許」です。この免許が交付されると消費者に対してアルコールを小売できるようになります。一般酒類小売業免許で料理を出せないように、飲食店営業許可ではアルコールを売ることは原則できないのですが、これはあくまで原則です。

 

飲食店は原則酒販免許を取得できない?

あくまで原則というお話をしましたが、飲食店でも、条件次第で酒類小売業許可を取得することは可能です。免許制度の原則的な部分を守らなければならないこともあり、税務署では、飲食店での酒類小売について厳しい姿勢をとっているとも推測されます。飲食店で酒販免許を取得し、実際にお酒を販売するとなると、現在のお店のレイアウトを変える必要があるなど、面倒なことは確かですが、ビジネスの拡大や新展開を考えているのであれば、考えてみる価値は大いにあります。実際、ワイン販売コーナーを設けているレストランを見かけたことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。

 

飲食店でお酒の小売をする場合の準備

レストランやバーを経営していると、お客さんから宅飲み用にお酒を買いたいと尋ねられることがあります。高級で、しかも珍しいお酒が飲食店にあった場合、お客さんの心理を考えれば、その場で売ってしまいたいという気持ちになっても仕方ありません。しかし、それをやってしまうと違法になるので、飲食店で合法的にお酒の小売をするためには、まずは酒販免許を手に入れることが必要です。また、飲食店そのものやビジネスのやり方自体を変更する必要もあります。

 

場所を分割・完全に分割

酒販免許は酒類小売業免許と酒類卸売業免許に大きく分けられます。これだけでもわかるとおり、小売業を営む場合と卸売業を営む場合で別々の免許が必要なのです。飲食店が法に反してお酒を販売したり、風上に当たる卸売業者が一般消費者に直接お酒を販売したりしてしまうと酒販免許制度自体が崩壊してしまいます。原則的に飲食店はお酒を販売してはならないとされているのですが、これを可能にする分割という方法があります。つまり、お酒を販売する場所と飲食を提供する場所を完全に分けてしまうのです。

たとえばホテルにはレストランがありますが、ホテル内には酒類を売っているスペースがあります。レストラン内では販売できなくても、レストランとは別の場所で、お酒専用の販売場所を作れば販売は可能なのです。もちろん、条件はこれだけではありません。まだまだ分割する必要があるものはたくさんあります。

 

売上も分割する

お酒の売上が飲食の売上と同じレジで処理されることは認められないため、これらも分ける必要があります。完全にレジである必要はないのですが、酒販免許を申請する際にどんなレジを使用するのか、説明書や出力されるレシートについて説明する必要があるので、それらが可能なレジを選びましょう。

 

在庫も分ける

お酒の在庫も、提供用と販売用で分割しなければなりません。「一方が足りなくなったからちょっと拝借」というようなことが発生しないよう、在庫は厳重に管理する必要があります。

 

仕入れ先も分ける

飲食店で提供される酒類は通常、酒類小売業免許を持つ酒販店から仕入れます。しかし、飲食店が酒類小売業免許を取得してしまうと、これまでと同じ仕入先から酒類を仕入れることはできません。飲食店のすぐ風上に位置する酒販店を営むための免許を取得してしまうと、免許のシステム上、その風上に位置する業者からでないと仕入れることが不可能なためです。したがって、飲食店が新たに酒類小売業免許を取得すると、小売用のお酒に関しては新しいお酒の調達ルートを探す必要があります。ただし、いつも仕入れている酒販店が、卸売免許を持っている場合は、その業者から仕入れることが可能です。その際も、当然ながら飲食用と販売用で仕入を分割する必要があります。

 

角打ちについて

角打ち(かくうち)をご存じでしょうか。多くの場合、古くから営業している酒屋にある立ち飲み形式のスペースのことをこう呼びます。ここまで、飲食店と酒類販売業者は、その許可によりできること、できないことが決められていることを説明してきたのですが、この角打ちはこれまでの説明とは矛盾していそうです。この角打ちの営業形態は、飲食業と酒販業の狭間で営業している…こんな風にいえるかもしれません。このからくりについて理解すると、飲食店と酒販免許の関係についてもより深く理解できるようになります。

 

角打ちは場所が分かれていないのでは?

角打ちは、酒屋の中でお客さんが立ち飲みしているように見えます。はっきりと飲食スペースとお酒が売られているスペースにも区別がないように見えます。この状態の中でお客さんは平然と飲み食いしているのですが、問題はないのでしょうか。

実は、角打ちでは、飲食店のようにアルコールを提供しているのではなく、販売しています。お客さんにお酒を出すときは、そのお酒は開栓されていません。同様に、角打ちでは食べ物もオーダーすることができますが、調理されたものではなく、調理不要で食べられるものしか出されません。つまり、この角打ちではアルコールは販売されているものであり、食べ物も販売されているものをお客さんが買い、その場で食べている…こういう図式になっています。大げさに言えば、酒屋でお客さんが商品を買い、勝手にその場で食べている。これが角打ちです。

角打ちは、酒屋にとっては飲食店にお酒を販売するよりも高いマージンをとることができるのでうれしいですし、一般消費者から見れば、飲食店で飲むよりも安く飲めるわけで、いいことのようにも思えます。

 

角打ちの立ち位置は曖昧

しかし、角打ちのような販売手法は、免許制度の本来の姿を考えると、非常に曖昧な立ち位置にあることは間違いありません。先ほども触れたように、上流に位置する業者が安い値段で下流にいる業者や消費者に商品を流してしまうと、公正な取引や税収といった面で問題が発生します。

この営業形態を見ると、飲食業と酒販業を同時に行うことは、酒販免許の本来の姿を考えると望ましくないといえます。もちろん、ご紹介してきたようにすべてを分割することで飲食業と酒販業を同時に行うことは可能です。ただし、税務署側のチェックが厳しくなることにも覚悟する必要があります。

 

飲食店でお酒の小売をする場合の要点

飲食店でお酒の小売をする場合のチェック項目についてまとめてみました。

・スペースを完全に分割
お酒を販売する専用スペースを設けて、飲食の場所とは完全に分割します。

・伝票も分ける
納品伝票においても、飲食店用と販売用の酒類を分ける必要があります。

・会計も分ける
お酒と飲食は別々のレジで会計する必要があります。

・仕入帳簿も分ける
仕入帳簿も分けなければなりません。

・在庫も分ける
伝票が分かれているからといって、飲食店用と販売用をいっしょに保管することはできません。

 

飲食店で酒販免許を取得するなら専門家に相談を

このように、飲食店で酒販免許を取得するには、数々のポイントをクリアする必要があります。税務署も原則的にはこれらを両立することには厳しい立場をとっているため、やはり手続きにくわしい専門家に相談するのがはじめの一歩になります。酒販免許の専門家には、税務署にいる酒類指導官、もしくは酒販免許の手続きに詳しい行政書士がいます。飲食店での酒販免許取得は、専門家のサポートは欠かせません。

 

まとめ

飲食店を営みつつ、酒販免許を取得する際に知っておくべきことを、酒販免許の本来の目的や、角打ちの説明をしながら解説してきました。飲食店の酒販免許取得は、税務署も原則、認めていないように、なかなか難易度が高くなります。認められたとしても販売スペースから仕入、お酒の在庫管理まですべて分ける、新しい仕入れルートの開拓など、やるべきことは数多くあります。お近くの税務署、または酒販免許にくわしい行政書士にアドバイスを求めましょう。

 

新会社で酒販免許をとろうと思ったら絶対に知っておきたいこと

これから新しく立ち上げる会社でも酒販免許は取得可能です。酒販免許を取得するには実績が必要だと考えている方も多いようですが、実際に酒販免許を新規で申請する会社の多くが新しい会社です。この記事では新会社設立時に酒販免許を取得するための準備や方法について解説しています。ポイントを押さえれば新しい会社でも酒販免許は問題なく取得できますので、ぜひ参考にしてください。

 

新会社でも酒販免許は取得可能

酒販免許は、正式には酒類販売業免許と呼ばれるもので、文字どおり、お酒を販売するために必要な免許です。この酒販免許にはいくつか種類があり、販売しようとしている業態やお酒の種類により、必要な免許が異なることに留意する必要があります。酒類免許はかなり細かく分類されているのですべてをご紹介することは避けますが、大雑把に分けると「酒類卸売業免許」と「酒類小売業免許」の2種類となります。その他酒類販売代理業免許、酒類販売媒介業免許もあります。

すでに存在している会社で、新たに酒販免許を取得しようとする場合、会社の財務状況が厳しくチェックされます。そのため、過去3期の赤字が大きい場合や直近期における繰越の赤字が大きいと、酒類免許を取得することは原則できません。その点、新しく立ち上げる会社の場合は、決算実績がないので、当然、この項目は審査されません。つまり酒販免許は、現在の資金や役員の経験が重要視されることになりますが、これまでずっと営業してきた実績のある会社よりも、過去の実績を審査されることがなく、その点だけで言えば新しく立ち上げる会社のほうが取得しやすいのです。

 

酒販免許取得のチェック事項

このように財務面のチェックがないため、新規で立ち上げる会社のほうが酒販免許取得において既存の会社よりもメリットがあることは確かです。しかし、ただ免許の取得申請をすれば取得できるというほど甘くはありません、免許をとるためには以下の要件が必要です。

 

事業計画がないと取得不可

先にご紹介したとおり、酒販免許には「酒類卸売業免許」と「酒類小売業免許」があります。酒類卸売業免許は、お酒の卸売業者、小売業者を対象とした免許です。一方、酒類小売業免許は、お酒を店頭で販売する業者のための免許で、さらに細かい分類のなかには、ネットショップなどを対象とした、幅広い地域に販売する業者のための免許もあります。すなわち、どのような形で事業を行うかによって必要な免許が異なるため、綿密に事業計画を立てる必要があるのです。このなかには販売計画(いくらで仕入れていくらで売るのか、どの程度の販売量を見込んでいるのかなど)も含まれます。これから始める商売をできるだけ詳細にイメージし、事業計画に落とし込んでいきましょう。

 

取得のための条件

財務チェックが入らないとはいえ、新規に立ち上げる会社の経営者には、それなりの条件が求められます。納税状況も当然チェックされ、過去に破産し、今なお復権していない場合は、酒販免許を取得することは不可能です。これは経営基礎要件と呼ばれるもので、酒販免許取得に限って問われる要件ではありません。酒販免許を取得するには、経営者となる人物に対する審査があることに留意しましょう。

そのほかに経営者は、酒類を販売するために必要な知識や経験を身に付けている必要があります。したがって、経営者がお酒に関してまったく素人では酒販免許を取得することはできません。免許取得前に、各地で開催される「酒類販売管理研修」を受講することで、これを満たすことができることもあります。

 

新会社で酒販免許を取得するための準備

ここからは、新会社を立ち上げて酒販免許を取得するための準備について説明していきます。ポイントを押さえて確実にステップを踏んでいくことで、確実に酒販免許を取得しましょう。

 

税務署か行政書士に相談

日本で酒類の販売について取り仕切っているのは税務署です。酒類販売業を営むことを決めたら、まず相談すべきは税務署です。税務署には酒類指導官という酒販の専門部署がありますので、ここに連絡をとって相談しましょう。

税務署を訪れる前に、できる限り細かく新事業について説明できるようにしていくと、相談はより有意義な時間になります。もちろんこの段階ではわからないことも多いはずですが、それは問題ありません。それを確認する機会が、この税務署での相談です。

ちなみにこのような事前相談は、税務署への相談だけではなく、行政書士に相談することも可能です。お住まいの地域に酒類販売に詳しい行政書士事務所があるようなら、そちらに相談してもいいでしょう。

 

事業目的をはっきりさせる

酒販免許を新しく立ち上げる会社で取得するには、事業目的をはっきりさせる必要があります。これはどんな事業を立ち上げる場合でも共通することです。具体的にいうと、新会社の事業目的の項目に、酒類販売に関する記載をしなくてはなりません。たとえば、「酒類の販売」などのように記載します。

事業目的の記載では注意しなければならない点もあります。もしも飲食店の経営も同時に考えているのであれば、事業目的にこれも盛り込まなければなりません。しかし、酒販免許を飲食店がとることは、お酒の仕入れルートの管理なども事業計画に盛り込まなければなりません。「やる予定はないが一応入れておこう」程度の場合は事業目的には含めないようにしましょう。また、この点について指摘されたら、「今はやらない」と答えておきましょう。

 

役員構成

会社には経営陣が必要となりますので、役員を決めなければなりません。すでにご紹介したとおりですが、経営陣には、実際にビジネスを運営した経験があること、そして酒販業界における経験、知識などが要求されます。これらは役員のうち1名だけ経験や知識があればよく、もし業界経験がない場合は、前出の酒類販売管理研修を受けることで業界経験として判断される場合もありますが、「必要最低限」という判断になります。
また、フランチャイズで始めようとする場合には、本部である会社が経験や実績があるかどうかにより判断されます。

 

新会社の場所

酒類販売免許を取得する住所と新しい会社の登記場所は、同じ場所でも別の場所でも問題ありません。ただし、免許の取得場所はかなり重要な要素なので、熟慮する必要があります。この点については、税務署や行政書士事務所に相談して、どのような場所に設定すればいいのか確認しておきましょう。具体的には、建物所有者だけでなく土地の所有者にも酒類の販売を行うことについて承諾をもらっておかなければなりません。

 

届出

これは新会社を設立したら必ず必要になる作業です。会社の住所地の役所、税務署、県税事務所などへ、会社の設立を届け出る必要があります。酒類販売免許の取得には納税証明書が必要となりますので、これを忘れると免許の取得申請ができません。

 

酒販免許取得が難しいケース

新会社を立ち上げて酒販免許を取得しようと考えても、条件によっては難しいケースもあります。既存の会社のように財務状況をチェックされることはないとはいえ、やはりお金に関するチェックは新会社の場合でも当然あります。ここからは、酒販免許取得を難しくする要素についてご紹介していきます。

まずは資本金額です。会社設立に際し、資本金額の規定はとくにありません。酒販免許取得を考えるなら「2ヶ月分の仕入資金」という基準がありますので、あまりにも少ないと資金の調達が必要となります。これには国税庁が定めている企業の財産要件が関わっています。この財産要件は、既存の会社が酒販免許を取得する際にも適用されるもので、「販売能力及び所要資金等の検討」という項目にある、

・最終事業年度以前3事業年度のすべての事業年度においてて資本等の額の 20%を超える額の欠損を生じている場合

・最終事業年度における確定した決算に基づく貸借対照表の繰越損失が資本等の額(資本金、資本剰余金及び利益剰余金の合計額から繰越利益剰余金を控除した額)を上回っている場合

(参考 一般酒類小売業免許審査項目一覧表:https://www.nta.go.jp/taxes/sake/menkyo/shinki/hambai/s05.pdf

により、あまりにも資本金額が少額では要件をクリアすることができないのです。5万円の資本金でも会社は設立できますが、酒販免許を申請するなら、資本金額はなるべく多く用意するに越したことはありません。

もう一点、これは少しテクニック的なことになりますが、新規に会社を設立する場合は、決算までの期間をなるべく先に設定することをおすすめします。設立からすぐに決算という流れになると、税務署はその数字を額面どおりに受け取ってしまう可能性があります。免許の申請時と決算が重ならないようにすることで、不要なリスクを避けることができます。

 

しっかり準備すれば酒販免許はとれる

ここまでご紹介してきたように、新規に立ち上げる会社でも、周到に準備をすることで酒販免許を取得することは可能です。酒販免許を取得して、新規に酒販ビジネスを立ち上げようと考えている方は、まずは税務署、または酒販免許に強い、地域密着型の行政書士事務所に相談してみましょう。

 

全酒類卸売業免許について

全酒類卸売業免許とは、日本酒や焼酎、ビールも含めすべての酒類を販売できる免許です。
販売できるとはいっても、昔の小売免許(国産酒でもどんなお酒でも通販で小売できる免許)ではないので注意してください。

国内販売はもちろん、輸出もできる免許になりますが、その取得条件はかなり厳しいです。

  • 酒類販売業に直接従事した経験が10年以上(酒類販売業を経営した経験が5年以上)または調味食品等の販売業経営経験10年以上の経験が目安
    ※これは例示規定であり、全酒類卸売業免許申請の絶対条件ではありません。
  • 年間100kl以上を販売できる見込みのあること
    100kl??一升瓶が1800mlですから・・・55556本以上販売できる見込み
    かなり厳しい販売数量ですねこれはあくまで予定ですが、仕入については見込みで100kl以上仕入の計画を立て、その2ヶ月分(年間仕入金額の6分の1以上)の資金が必要となります。
    この見込み数量は、取引承諾書などで証明しなければなりません。
  • 直前の繰越欠損金額が資本等の金額を越えていないこと
    (債務超過になっていないこと)
  • 直近3期連続で資本等の金額の20%を超える赤字でないこと
    (1期でも黒字であれば大丈夫です。)
  • 抽選に当選すること(抽選は10月に行い、申込は9月中になります。)
    これが一番むずかしい条件になります。
    東京や大阪、愛知以外は毎年1件程度しか当選枠がなく、東京や大阪でも6〜8件程度
    抽選申込件数は当選件数のおおよそ6〜7倍程度ですが、申込みの時点で申請先の税務署を担当する酒類指導官によって、ふるいにかけられていることもありますから、申込みすらできていない方もいるかと思います。

私が今まで申請をした案件でも、当選し、免許交付となったのは、ほんの数件程度ですから、なかなかのハードルの高さだと思います。
また、一度全酒類卸売業免許を取得すると、免許取得した都道府県から他の都道府県へ、移転しようと思うと抽選に当選しなければなりません。
免許は場所に付与されているものですから、例えば全酒類卸売業免許取得会社を吸収合併された際でも、都道府県をまたいで移転するときには1年に1回の抽選で当選しなければならないです。

 

梅酒(リキュール)やウイスキーを輸出するための免許

梅酒(リキュール)やウイスキーを輸出するための免許は、『全酒類卸売業免許』『洋酒卸売業免許』『輸出酒類卸売業免許』のいずれかが必要となります。この全酒類卸売業免許は各都道府県ごとで毎年交付可能件数が決められており、なかなか取得が難しいですが、洋酒卸売業免許や輸出酒類卸売業免許については、免許交付可能件数は定められておらず、免許取得が可能な免許になります。

 

輸出酒類卸売業免許

この輸出酒類卸売業免許を取得するためには、法人であれば役員、個人であればその個人の今までの事業経験や職務経験などと『輸出することが確実であると認められるもの』がひとつの判断基準となっています。
輸出することが確実であると認められるもの』については、日本酒、焼酎を輸出するための免許でも書いておりますが、海外の取引予定先と仕入(卸免許取得業者または蔵元)の取引予定先との取引承諾書によって証明します。
その取引承諾書は、ガチガチの契約書のような形式ではなく、『〇〇が販売予定している酒類を売買することについて承諾する。』『〇〇が輸出酒類卸売業免許を1年以内に取得しなければ失効する。』などといった簡単な覚書程度で大丈夫です。

海外の取引予定先との取引承諾書は、基本的には英文で作成する必要がありますが、相手先の言語でもよく、取引予定先が日本語を熟知している場合には日本語で作成されてもよいです。
※英文や相手先の言語で作成された場合は、和訳分の添付も必要となります。

事務所等の販売場について

輸出酒類卸売業免許の申請にあたり、事務所等の販売場が必要となりますが、いざ輸出をされる場合には、倉庫を借りるまたは蔵元から直送されることが多いと思いますので、申請の際に大掛かりな倉庫は必要ありません。
当事務所で申請したケースですと、1〜3人程度のオフィスでも免許交付されたこともありますので、そこまで気にする必要はありません。
ただ、マンション、アパート等の共同住宅ですと管理組合や大家さんの承諾が必要となります。

免許に付される販売条件

免許には、販売する条件が付されます。
輸出酒類卸売業免許の場合で梅酒とウイスキーを輸出するときは、『酒類の販売方法は自己が輸出するリキュール及びウイスキーの卸売に限る。』のような販売条件が付きますので、日本酒、焼酎を販売されたい場合には、それらも仕入先、海外の販売先から取引承諾書をもらっておくとよいでしょう。

日本酒、焼酎、梅酒、ウイスキーを輸出する場合は、『酒類の販売方法は自己が輸出する清酒、単式蒸留しょうちゅう、リキュール及びウイスキーの卸売に限る。』などの販売条件となります。

 

洋酒卸売業免許

この洋酒卸売業免許は、ワインや梅酒、ウイスキーやブランデーなど日本酒、焼酎、ビール、みりん以外の酒類を卸業者や小売業者へ販売ができる免許になります。
これら洋酒に該当する酒類なら、国内販売も輸出もできる免許です。

免許取得のための経験条件ですが、法人であれば役員、個人であればその個人が『酒類の販売業に直接従事(従業員として)した経験が3年以上または、調味食品等の販売業の経営経験が3年以上』等、輸出酒類卸売業免許とは少し違い、具体的に例示されています。

ただし、あくまで例示の規定になりますから、これに合致する必要はなく、今までの事業経験などから総合的に判断されます。

事務所等の販売場について

これも輸出酒類卸売業免許と同じで、倉庫については免許交付後に借りる予定でも申請は可能です。

免許に付される販売条件

洋酒卸売業免許の場合は、『酒類の販売方法は、果実酒、甘味果実酒、ウイスキー、ブランデー、スピリッツ、リキュール及び雑酒の卸売に限る。』のような販売条件になります。

 

全酒類卸売業免許

すべての酒類を国内販売、輸出を問わず卸売ができる免許になります。
毎年9月にその年度の免許交付可能件数が発表され、抽選申込は申請によって行います。
競争率も高い免許になりますし、年間販売数量100kl(500mlだと20万本程度)の販売を見込んでいなければなりません。
現在では新規でいきなり申請される方はほとんどなく、この100kl以上の販売実績がすでにあるような卸業者が申請されています。

 

まとめ

梅酒やウイスキーを輸出するためには、『全酒類卸売業免許』『洋酒卸売業免許』『輸出酒類卸売業免許』のいずれかの取得が必要ありますが、この中でも一番ハードルが低く、使いやすい免許は『輸出酒類卸売業免許』でしょう。